横架材接合部(継手)のビス止め金物(短冊金物)による補強の注意点
- info851527
- 5月3日
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更新日:5月11日
~木造集合せん断破壊~
木造建築でよく使われる横架材接合部(継手)の補強にはビス止め金物(短冊金物)があります。通常、横架材接合部(継手)はビス止め金物(短冊金物)で補強され、横架材の梁成によって1段設置または、2段設置されているかと思います。一般的な住宅規模であれば、よほど耐力壁線間距離がとんでいたり耐力壁配置に偏りがない限り気にする場面が少ないかもしれません。
しかし、建物規模や使い方によって注意しなければならないことがあります。その注意を怠ってしまうと想定した接合部耐力が出ない危険性があります。今回は、「集合せん断破壊」についてまとめます。
突然ですが、切り取り線を思い浮かべてください。切手やクーポン券など切り取るのに便利な切り取り線ですが、よく見てみると切り取りたいラインに一定の間隔で小さな穴がありていないでしょうか?同じ紙でも切り取り線のないものとあるものとでは切り取りに必要なチカラがかなり違ってくるのではないでしょうか。ポイントは同じ列や行にあな、いわゆる欠損があるということです。そんな切り取り線現象が木造の横架材接合部(継手)にも起こりうるのです。考えてみるとゾッとしませんか?
非住宅など大規模物件の設計では、耐力壁線間距離が10mを超えることがよくあります。そこで問題になるのは水平構面(床構面)の面外変形です。面外変形により横架材接合部(継手)に大きな引張力が発生します。その引張力に抵抗するため、横架材接合部(継手)のビス止め金物(短冊金物)による補強が必要になるのです。
下記はJISトラスマニュアルに掲載されているページの抜粋です。
HDジョイント25kN用×n個=28.0kN×nと記載がありますが、単純な足し算にはならないことがあります。それは先述したとおり切り取り線現象、いわゆる「集合せん断破壊」です。

下記は集合せん断破壊を考慮した横架材接合部(継手)のビス止め金物(短冊金物)の短期接合耐力を算定したものとなります。(集合せん断破壊については一般社団法人 日本建築学会「木質構造接合部設計マニュアル」に記述があります。)こちらの接合部耐力は、HDジョイント×4本のため、28.0kN×4本=112kNとなります。しかしながらビスが同列に配置されているため、切り取り線現象「集合せん断破壊」について考慮しなくてはなりません。その結果、接合部耐力は60kNと低減されてしまうのです。単純な合計値ではないので注意が必要です。

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